日本に根付いた文化である、お辞儀。式典や挨拶でお辞儀をする機会があるほか、毎日見かけるくらい日常生活でもお辞儀することは多いでしょう。小学校などでは、起立、礼、着席が当たり前でしたが、社会人であってもお辞儀の動作をおこないます。しかし、お辞儀になれてしまったからこそ、お辞儀がないがしろになっているのも事実です。飲食店やコンビニで残念なお辞儀を目にしたことはないでしょうか。例えば首から頭だけペコっと下げるお辞儀や、あごが出たお辞儀も頻繁に見かけます。お辞儀や感謝や礼を示す動作ですが、汚いお辞儀では逆に悪い印象になってしまいます。どんなに誠実な気持ちで相対していたとしても、汚いお辞儀は丁寧さややる気も感じられず、相手に失礼です。社会人マナーとして、もう一度お辞儀の仕方を考えてみましょう。
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美しいお辞儀のポイント
頭を下げるとき腰から曲げる
美しくないお辞儀で多いのが、背中が丸くなってしまっているものです。お辞儀のスタートは正しい姿勢。初めの姿勢が悪いと美しいお辞儀にはなりません。正しい姿勢にするには、横から見た時に耳と肩、くるぶしまで一直線になるように立ってください。背筋をピンと伸ばして相手とアイコンタクトしてからお辞儀しましょう。笑顔で相手の顔をしっかり見てから、姿勢を正した状態から腰を曲げます。この時背中が曲がらないように注意します。両足を揃えて腹筋で上半身を引き上げるようにすると良いでしょう。目線を足元に置くと背中が丸くなってしまいます。視線を少し前に向けることで、背筋を伸ばしたまま腰から礼をすることができるでしょう。背筋が伸びていないお辞儀はだらしなく見えてしまいます。また手もブランと下がったままよりも、体の前でそっと重ねるようにするか、体の横で揃えます。指を開かないようにするとより丁寧な印象になるでしょう。
メリハリをつける
美しいお辞儀のポイントがメリハリです。なんとなく挨拶の流れでおこなうお辞儀はメリハリがなくて、相手に気持ちが伝わりません。お辞儀をするときには静止と動きのタイミング、動かす場所とピタッと止める箇所のメリハリをつけるようにしてください。ダラダラゆっくりしたお辞儀は相手をイラつかせ、逆に早すぎるお辞儀は相手に粗雑な印象を与えます。お辞儀を美しく見せるには、体を素早く倒してからゆっくりと起こすようにします。体を倒すときが1カウントだとすると、起こすときは2カウントくらいを意識してください。きびきびとした動作ではっきりとお辞儀をすると、相手に伝わりやすくなります。またお辞儀をした時は、頭を下げてからキッチリ静止するとメリハリがつきます。目安としては2秒程度止まるようにします。自分が思っているよりも自分は大きく動いていません。かなり頭を下げているつもりでも、人から見ると少し体を曲げた程度にしか見えないこともあるでしょう。お辞儀をするときは少し大げさにおこなった方が、メリハリがついて見えます。自分で動画に撮るか鏡で見てお辞儀の動きを確認しましょう。またお辞儀には挨拶しながらお辞儀をする同時礼と、挨拶をしたあとに礼をする分離礼があります。分離礼のほうがよりあらたまった印象になるため、お客様や取引先には分離礼がふさわしいでしょう。同僚などの場合は素早い同時礼を使っても良いでしょう。
お辞儀の角度を使い分ける
お辞儀はいつでも同じ角度でするのではなく、場面に合わせて使い分けることも重要です。お辞儀の種類について紹介します。
会釈
会釈は腰から15°ほど倒すお辞儀です。会釈は日常的な動作として使う機会が多いお辞儀。例えば目上の人とすれ違うときや、お茶をお出しするときには会釈をおこないます。
普通礼
普通礼は腰から上体を30°ほど倒す礼です。目線は相手の膝あたりを見ると自然と普通礼になります。普通礼は目上の人のお出迎え、お見送りなどで使われるお辞儀です。名刺交換や自己紹介するときにも普通礼を使います。ビジネスシーンでは使う機会が多いお辞儀なので、練習しておくようにしてください。
最敬礼
最敬礼は上体を45°程度折り曲げるお辞儀です。目線は相手のつま先、0.5m先を見るようにしてください。ビジネスシーンで最も丁寧なお辞儀なので、深い感謝や謝罪の時も最敬礼でお辞儀します。また冠婚葬祭などあらたまった場でも使われることが多いでしょう。上記のお辞儀は厳密に使い分けしなければいけないわけではありません。しかし、TPOに合わせて使い分けるようにするとお辞儀にメリハリがつきます。お辞儀はどうしても形式的になりがちなので、日常で上手く使い分けるようにしましょう。
明るい表情と明るい発声
お辞儀の第一印象を大きく変えるのが、明るい表情と発声です。笑顔を向けてアイコンタクトするだけでも十分に好意を伝えることができます。また挨拶とお辞儀をする場合、挨拶をしてからお辞儀をおこないます。しっかり顔を見て明るい顔と発声で挨拶することで、後のお辞儀の印象も良くなるでしょう。これは語先後礼とも呼ばれています。挨拶をしながらお辞儀の動作に移るとだらしなくなるため、必ず相手の目を見て微笑んでから挨拶の言葉、最後にお辞儀という順序でおこないましょう。またお辞儀をした後も笑顔は崩さないようにします。顔を上げてからもう一度アイコンタクトをしてください。また明るい表情と発声はトレーニングも重要です。笑顔を美しく見せるには口角を引き上げるようにします。いつでもすぐに笑顔を作れるように鏡などで練習してみてください。また声のトーンも普段より少し高めを意識します。「ウィスキー」と口に出すと自然に口角が挙がって笑顔を作ることができます。鏡をもって何度も「ウィスキー」というトレーニングをしてみましょう。
美しいお辞儀のポイント
お辞儀は3秒のおもてなしとも呼ばれています。おもてなしの主体はもてなす側ではなく、もてなされる側です。美しく見えるお辞儀を踏まえたうえで、相手やタイミングにふさわしいお辞儀をおこなうようにしてください。例えばいつもは丁寧なお辞儀をしていたとしても、お客様を待たせしているときなどは素早くテキパキとしたお辞儀が必要になります。逆に、ゆっくりと時間が取れるときやリラックスしているときは、丁寧なお辞儀が求められるでしょう。お辞儀なんて誰にでもできると軽く考えるかもしれません。しかし、タイミングやシーンに合わせて瞬時に適したお辞儀を選ぶのは大変です。しかし、お辞儀は相手を大切にしている、おもてなしをしていることを表現できる動作。相手に気持ちを伝えるためにも、美しいお辞儀を身につけましょう。