医療現場では、モンスターペイシェントの問題が叫ばれるようになりました。そのような中で、看護師はどのように患者さんに向き合えばいいのか悩まれていることでしょう。クレームの特徴や対処法を理解しておくと、どのようなトラブルにも対処できるようになります。今回は、患者さんのクレームの特徴と対応方法をご紹介します。
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患者さん(ご家族)の感情を害さない
病院でのクレーム対応では、患者さんの感情を害さない配慮が必要です。たとえこちら側に落ち度がない場合でも、相手の感情を逆なでしないよう注意しましょう。
言いやすい人に苦情を言う
患者さんがクレームを言う相手は、不満があった相手とは限りません。多くの人は、自分に関係が深い人にクレームを言いづらいものなのです。直接相手にクレームを言うと、自分の対応が悪くなる恐れがあるためです。だからこそ、クレームを言う相手を選んでおり、自分に危害が及びづらい人に対してクレームを言う傾向があります。例えば、医師や看護師に直接伝えず、受付にクレームを言う場合です。または医師に不満があっても言えず、看護師に気持ちをぶつけてくるかもしれません。看護師にとっては「関係ないクレーム」だと思ってしまいますが、患者さんから見ると同じ医療機関の人間なのです。患者さんが不満をもつ対象者とは別にクレームを言ったとしても、看護師は病院のスタッフとして、患者さんの意見に耳を傾けなければなりません。
過去の問題からクレームを言う
患者さんの中には、過去の経験からクレームを言ってくる場合があります。過去に同じ病院で親身に話を聞いてもらえず、満足した医療が受けられなかった経験などです。患者さんは、「また同じ対応になるのではないか」という不安を抱えており、クレームを言ってくる場合があります。この場合は、過去の経験からの不安が原因のため、今回の対応に問題がないかもしれません。親身に対応していれば、患者さんがどこに不安を感じているのか気づくキッカケになるでしょう。怒っている内容とは別なことに、不安を抱えているケースは少なくありません。
立場や意見の違いに気を遣う
病院でのクレーム対処は、患者さんの立場や意見の違いに配慮する必要があります。患者さんは医療の専門知識が乏しいことが少なくないため、一般の人の意見に目を向けなければなりません。
説明不足によるトラブル
病院側が説明不足だった原因により、患者さんからクレームを言われるケースがあります。例えば、予約を入れて来院したにも関わらず、長く待たされた場合、患者さんは不安を感じるでしょう。事情がありお待たせするようなら、最初に説明すべきです。または、待合室で待っていても呼ばれず、売店やトイレに行きたいと患者さんは悩んでいるかもしれません。少し席を外したすきに呼ばれると、順番を後回しにされる心配があるでしょう。最初にどのくらいの時間待つ可能性があるのか、席を外すときは受付に一声かけるよう伝えておけば、クレームは防ぐことができます。説明不足は、治療方針に対してもあります。患者さんは医療の知識が乏しいことが少なくないため、かみ砕いた説明が必要でしょう。不明な部分を残したまま治療を進めると、トラブルに発展するかもしれません。
治療に対する相違や費用について
治療に対する考え方は人それぞれで、医師や看護師と患者との間で相違が生まれるケースがあります。患者さんによっては、できるだけ治療費を抑えたい場合もあるでしょう。それなのに必要もないと思われる検査をされたら、クレームの原因となる恐れがあります。薬に対しては、ジェネリック医薬品を勧めるなど、治療費を減らす提案をすべきです。治療内容による相違は、患者さんが高度な医療を受けたい場合や、親身な対応を求めるケースなどです。どこでも高度な医療が受けられるとは限らないため、対応できない場合があるでしょう。親身な対応を求める患者さんに簡単な対応をすれば、「放っておかれた」「話を聞いてくれない」と感じる可能性があります。
どんな時にクレームを言うのか
医療現場のクレーム対応では、患者さんがクレームを言うキッカケを知っておく必要があります。ほとんどの場合は、不満があっても口に出さず、よほどのことがあったからクレームを言っているのです。
クレームを言うのはほんの一部
アメリカのマーケティングリサーチ研究によるクレーム調査では、クレームを言う人の割合は少ないことがわかっています。調査内容によると実際にクレームを言う割合は、4%のみです。100人同じ不満をもった患者さんがいるとすれば、4人しか苦情を言わないことになります。多くの患者さんは、病院側に不満があったとしても口に出していません。その理由はさまざまですが、「些細なことなので言わない」ケースもあれば、「大きな問題ではないから我慢すべき」だと考えている可能性があるでしょう。不満があっても口に出さない患者さんは、潜在的なクレームのリスクがあります。小さな不満や一度だけなら我慢できたとしても、何度も繰り返されれば我慢の限界が来るでしょう。多くの場合は、大きな問題に発展するまでクレームを口に出さない特徴があります。
身内に非があるケースにクレームになりやすい
患者さんがクレームを言うのは、看護師自らミスをした場合、他の部署でミスをした場合、患者さんの思い違いによるものが挙げられます。この中でもクレームに発展しやすいのが、他の部署でのミスです。看護師がミスをした場合は、患者さんも直接本人に言いづらい現状があるでしょう。患者さんの勘違いが原因の場合も、きちんと説明すれば解決できるトラブルがほとんどです。ただし、身内に非があるときは原因がわかりにくく、患者さんの怒りが大きくなっている可能性があります。患者さんからクレームを言われたら、身内の非も考えるようにしましょう。
まとめ
病院でのクレーム対応をする場合は、クレームの特徴をよく把握しておきましょう。多くの患者さんは、小さな不満なら我慢している可能性があります。不満が蓄積していき大きな問題に発展しているからこそ、クレームになると理解しておいてください。また、患者さんからのクレームは、言われた人のミスではない場合が少なくありません。患者さんにとって病院スタッフがひとくくりだと考えられるため、全体の問題が特定の人にぶつけられる場合があります。クレーム対応をするときは、個人のミスだけでなく、病院全体の問題を把握するようにしてください。
続きとして、『看護師のためのクレーム対応マニュアル5』はこちら
ライター情報
小林・40代