現代では、患者さんからのクレームに頭を悩ませる医療機関は少なくないでしょう。クレーマーだと感じる患者さんがいると、対応に困ってしまうものです。そもそもクレームとはどんな意味があるのでしょうか。患者さんの意見だととらえる必要性や、どのような点に相違が生まれやすいのかご紹介します。
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クレームは苦情
クレームには、「権利主張する」という意味があります。権利主張は意見のため、クレームを苦情だととらえず、意見だと判断しなければなりません。
慢性疾患の患者さんは多彩なサービスが必要
クレームを意見としてとらえる必要があるのは、医療サービスの充実を測る指標だからです。医療機関の仕事はサービス業だととらえれば、患者さんの希望に答えるのは当然でしょう。患者さんが医療機関に求めるのは、病気を治すことだけではありません。医師や看護師の対応の良さや、病院での居心地の良さなど、多彩な面でのサービス向上が求められています。とくに近年は、慢性病が増えており、長い期間病院に通う人が少なくありません。厚生労働省による平成19年国民生活基礎調査では、痛みの症状が上位を占めていると発表されています。さらに、心血管系疾患・がん・慢性呼吸器疾患・糖尿病における死亡割合は約60%を占めており、今後は77%まで増加するという発表もあるようです。慢性病を抱える患者さんは、長期的に病院を受診しなければなりません。適切な治療結果を得るために、患者さんによく説明して理解してもらう必要があるでしょう。このような現状から医療機関側は、長く病院に通う患者さんと適切なコミュニケーションが求められています。
クレームからサービス向上に繋がる
患者さんの声は、それぞれ医療機関の改善策が含まれているといえます。クレームには、患者さんが求めるニーズやウォンツを含むため、それらを把握すれば問題点を少しずつ改善できます。どのような医療機関であっても、いきなり高レベルのサービスに到達することはできません。日々の生活で受ける患者さんのクレームに少しずつ対処するうちに、サービスの質を上げることができます。病院側のサービス向上のプロセスには段階があります。第一段階として患者さんのクレームがあるため、見逃さないようにしましょう。患者さんのクレームがあってはじめて、客観的な視点で病院の問題点が明らかになります。問題点が明らかになったら、クレームの予測や対策が求められます。危機が回避できるようになったら、再発防止対策をしていく必要があるでしょう。
幅広い患者さんのニーズがわかる
患者さんのクレームを大切にすべき理由として、幅広い患者さんのニーズがわかりやすい点があります。受診する患者さんは、幅広い年代や性別の人がいるため、それぞれ病院に求める要素が異なります。クレームは患者さんの意見のため、年代や性別をはじめ、生活環境の違いによるニーズが明らかになるでしょう。問題点を改善していけば、結果的に総合的な面に対応した医療サービス提供に繋がります。幅広い患者さんからの信頼を得られれば、地域に根差した医療機関として受け入れられることになるでしょう。
クレームの受取方法が対応の違いに
病院側のクレームの受取対応と患者さんのニーズが合わないと、患者さんに不安を抱かせる原因になります。小さな問題だけなら問題ないと思うかもしれませんが、患者さんが直接口に出さず、結果的に病院の経営不振につながる恐れがあります。
馴れ馴れしい口調が嫌だった
患者さんの世代や性別によっては、看護師の馴れ馴れしい口調が気になる場合があります。看護師としては親しみを込めて話しており、患者さんの不安を和らげるためだったかもしれません。しかし、患者さんの背景によっては、「馬鹿にされた」と感じる場合や、医療の質の低さを疑う可能性があります。
プライバシーに触れられたくない
患者さんによっては、家族のことや仕事など、プライベートのことまで話したくない場合があります。看護師は、患者さんに親しみをもってもらうための対処だったのでしょう。いつも同じ患者さんが来院する病院では、よくありがちなトラブルです。患者さんが話したがらない様子を見せたら、当たり障りのない話題に変える必要があります。
きちんと説明して欲しかった
何度も来院している患者さんだと、詳しい説明を省いてしまうことがあります。「前にも説明したから大丈夫だろう」と思ってしまうのは、患者さんとの間に相違が生まれる原因です。何度も説明している患者さんに対しては、もう一度説明が必要なのか聞くべきだったかもしれません。患者さんによっては、何度も説明を聞かされるのを面倒だと感じる人もいるので、柔軟な対応が求められます。
看護師さんに話しかけづらい
看護師としては、患者さんを待たせないよう、テキパキと働いて気遣っているかもしれません。患者さんによっては、忙しそうな雰囲気で、看護師に話しかけづらいと悩んでいる方もいます。話しかけづらい雰囲気があれば、患者さんの不安や疑問を伝えられず、ミスに繋がる可能性があるでしょう。患者さんによっては雑に扱われたと感じる方もいるため、その時に応じて対応を変える必要があります。
特定の人とだけ親しくしている
看護師としては、顔なじみの患者さんと親しく会話しただけかもしれません。しかし、新しく来院した患者さんにとっては、特定の患者さんだけ特別扱いしていると感じる可能性があります。何度も話していて事情を理解している患者さんとは、話が弾むのは当然でしょう。それでも、どの患者さんにも同じように対応するべきなのです。新しい患者さんと話す内容を決めておけば、業務的な対応となる心配は減らせます。
まとめ
病院に対するクレームは、苦情だととらえず、患者さんの意見だと考えるようにしましょう。患者さんの世代や性別によっても感じ方が異なるため、細かいニーズの把握が必要となります。クレームは一人ひとりの貴重な意見で、意見を基にして改善策を試せば、質の高い医療が目指せるでしょう。看護師は、患者さんがなぜクレームを言うのか、その背景を探る必要があります。勝手に「そうだろう」と決めつけるのではなく、それぞれの患者さんの意見に耳を傾けることが重要です。
続きとして、『看護師のためのクレーム対応マニュアル4』はこちら
ライター情報
小林・40代