デイサービスの看護師の役割と仕事内容とは?キャリアの可能性と必要なスキル

酒井 隆之

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デイサービスにおける看護師の存在は、医療と介護をつなぐ重要な架け橋です。病院とは異なる「生活の場」で専門知識を活かしながら、利用者の健康を守り、安心して過ごせる環境を作り出しています。本記事では、デイサービス看護師の具体的な役割や仕事内容、必要なスキル、メリット・デメリットまで詳しく解説。キャリアプランを考える看護師の方や、施設運営に関わる方々にとって、貴重な情報となるでしょう。デイサービスという現場で輝く看護師の姿をご紹介します。

 

デイサービスにおける看護師の役割とは


デイサービス看護師の役割2

デイサービスは、要介護認定を受けた高齢者が日中を過ごす通所介護施設です。この環境で働く看護師は、医療と介護の架け橋となる重要な存在です。デイサービスにおける看護師の最も基本的な役割は、利用者の健康状態を常に把握し、安全に過ごせるよう見守ることにあります。

医療機関と異なり、デイサービスは「生活の場」という側面が強いため、看護師は医療的ケアだけでなく、利用者の生活全体を支える視点が求められます。具体的には、持病の管理や服薬指導といった医療的な側面と、その日の体調や心理状態に合わせた細やかなケアの提供が必要です。

また、デイサービスの看護師は、利用者と家族、他の介護スタッフ、かかりつけ医などの多職種をつなぐ連携役も担っています。情報共有の要となり、利用者一人ひとりの状態変化を見逃さず、適切なタイミングで医療機関への受診を提案することも重要な役割です。

このように、デイサービス看護師は医療知識を持ちながらも、より生活に寄り添った「予防的」「日常的」なケアを提供し、利用者が住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けるための支援者として欠かせない存在なのです。

 

デイサービス看護師の主な仕事内容


デイサービスで働く看護師の業務は多岐にわたります。基本的にはサービス提供時間内に利用者の健康管理を担当し、安全に過ごせるよう支援します。主な仕事内容は以下の3つとなります。

  • 利用者の健康管理
  • 医療行為の実施
  • 介護スタッフのサポート

医療機関と異なり、デイサービスでは比較的状態の安定した利用者が対象となりますが、高齢者が多いため予期せぬ変化が起こりやすい環境でもあります。看護師は専門知識を活かして、介護職員では判断が難しい医療的な側面から利用者をサポートし、安心・安全なデイサービス運営に貢献しています。それでは、主な仕事内容について詳しく解説します。

 

利用者の健康管理

デイサービス看護師の最も基本的な業務は、利用者の健康状態の把握と管理です。まず朝の受け入れ時には、血圧・脈拍・体温・血中酸素飽和度などのバイタルチェックを行い、その日の体調を確認します。この時、顔色や表情、会話の様子からも健康状態を観察することが重要です。

特に注意が必要なのは、慢性疾患を持つ利用者の状態管理です。糖尿病患者の血糖値チェックや、心疾患・高血圧のある方の血圧管理など、疾患に応じた観察と対応が求められます。また、服薬管理も重要な業務で、正しい薬が適切なタイミングで服用されるようサポートします。

健康管理の一環として、水分・食事摂取量の確認や排泄状況の把握も欠かせません。脱水や便秘は高齢者の体調悪化につながりやすいため、日々の変化に注意を払います。また、皮膚トラブルの早期発見とケア、褥瘡予防のための体位変換なども行います。

これらの日常的な健康管理を通じて異変を早期に発見し、必要に応じて家族や主治医への連絡、受診の提案を行うことで、重篤化を防ぐ予防的役割を果たしています。

 

医療行為の実施

デイサービスで看護師が行う医療行為は、医療機関と比べると限定的ですが、利用者の安全と健康維持のために重要です。まず基本となるのは、医師の指示に基づく処置や管理です。

具体的な医療行為としては、褥瘡・創傷の処置があります。利用者の皮膚状態を観察し、必要に応じて消毒や包帯交換などを行います。また、胃ろうや経鼻チューブを使用している利用者の経管栄養管理、導尿や尿道カテーテルの管理なども含まれます。

インスリン注射の実施も重要な業務です。糖尿病で自己注射が困難な利用者に対して、血糖値を測定した上で適切な量のインスリン投与を行います。また、在宅酸素療法を行っている利用者のサポートや、痰の吸引なども必要に応じて実施します。

日常的な医療行為に加えて、看護師は緊急時の応急処置も担当します。転倒による外傷や突然の体調変化、誤嚥などの緊急事態に対して、迅速かつ適切な対応を行うことが求められます。

これらの医療行為を通じて、看護師はデイサービスにおける医療的安全を確保し、利用者が安心して過ごせる環境づくりに貢献しています。

 

介護スタッフのサポート

デイサービス看護師の重要な役割の一つに、介護スタッフとの連携とサポートがあります。看護師は医療の専門知識を持つ立場から、介護スタッフに対して適切な助言や指導を行います。

まず、利用者の健康状態や注意点について、介護スタッフと情報共有を行うことが基本です。朝のミーティングで観察ポイントを伝えたり、持病や薬の副作用について説明したりすることで、チーム全体で適切なケアができるよう支援します。

食事介助の場面では、嚥下機能に応じた食事形態の提案や、誤嚥リスクの高い利用者へのサポート方法を指導します。また、入浴介助においては、血圧変動リスクのある利用者の観察ポイントや、皮膚トラブルがある場合の対応方法などをアドバイスします。

レクリエーション活動では、各利用者の身体機能や認知機能に合わせた参加方法を提案し、無理なく楽しめるようサポートします。また、介護スタッフからの「この症状は大丈夫か」といった相談に応じ、医療的判断を提供することも重要な役割です。

このように、看護師は医療と介護の橋渡し役として、専門知識を活かしながら介護スタッフとチームを組み、利用者が安全に過ごせる環境づくりに貢献しています。

 

デイサービス看護師に求められるスキル


デイサービス看護師の役割3

デイサービスで活躍する看護師には、病院とは異なる特有のスキルが求められます。医療機関では治療が中心となりますが、デイサービスでは利用者の生活全体を支える視点と、予防的なケアが重要になります。必要となる主なスキルは以下のとおりです。

  • 観察力と判断力
  • コミュニケーション能力
  • 緊急時の対応力

それぞれについて、以下で詳しく見ていきましょう。

 

観察力と判断力

デイサービス看護師に最も求められる能力の一つが、鋭い観察力と適切な判断力です。利用者は自分の体調変化をうまく伝えられないことが多く、わずかな変化を見逃さない「目」が必要です。

特に高齢者は非定型的な症状を示すことが多いため、通常の基準だけでは判断が難しいケースがあります。例えば、発熱や痛みの訴えがなくても、いつもと違う様子や表情、食欲低下、活気の減退などから体調不良を察知する洞察力が求められます。

また、慢性疾患を持つ利用者が多いため、それぞれの疾患特性を理解した上での観察と判断が重要です。心不全の利用者であれば浮腫みや呼吸状態、糖尿病であれば血糖値の変動や口渇など、疾患別の注意点を把握しておく必要があります。

さらに、観察した情報から「このまま様子を見ても大丈夫か」「医療機関への受診が必要か」「救急対応が必要か」といった判断を適切に行い、過剰対応にも過小評価にも陥らない冷静さも重要です。

このように、デイサービス看護師は限られた情報と時間の中で、医療的視点から利用者の状態を的確に評価する能力が求められます。

 

コミュニケーション能力

デイサービス看護師には、多様な相手と効果的にコミュニケーションを取る能力が不可欠です。まず利用者とのコミュニケーションでは、認知症や聴覚障害がある方にも配慮した話し方や、非言語的サインを読み取る力が求められます。

高齢者は自分の症状をうまく表現できないことも多いため、「どこか調子が悪そうですね」と声をかけ、体調変化を引き出す対話力も必要です。また、利用者の尊厳を守りながら、必要な医療的ケアを受け入れてもらうための説明力や信頼関係構築も重要なスキルです。

介護スタッフとのコミュニケーションでは、医療的知識を分かりやすく伝え、チームケアの質を高める連携力が求められます。専門用語を多用せず、具体的な観察ポイントや対応方法を共有することで、安全なケア提供につなげます。

さらに、家族との連絡では、医療情報を適切に伝えつつ、家族の不安に寄り添い、在宅生活を支えるためのアドバイスを提供することも重要です。医師やケアマネジャーとの情報共有では、簡潔かつ正確に状態変化を報告する能力も必要となります。

このように、デイサービス看護師はさまざまな立場の人々との円滑なコミュニケーションを通じて、利用者を中心とした包括的なケアを実現しています。

 

緊急時の対応力

デイサービスでは、高齢者の体調が急変するリスクが常にあります。そのため看護師には、緊急時に冷静かつ迅速に対応できる能力が求められます。まず重要なのは、危険を予測し予防する先見性です。利用者の持病や過去の体調変化のパターンを把握し、リスクを最小限に抑える予防的な視点が必要です。

緊急事態が発生した場合は、迅速なアセスメントと初期対応が求められます。転倒による外傷、突然の意識障害、誤嚥、心肺停止など、さまざまな状況に対して適切な応急処置を行う実践力が不可欠です。特に、BLSなどの救命処置を確実に実施できる技術は、生命を守るために重要です。

また、緊急時には介護スタッフに的確な指示を出し、チーム全体で連携して対応することも必要です。「Aさんは救急車を呼んでください」「Bさんは他の利用者を別室に誘導してください」など、明確な役割分担をする指示力も求められます。

さらに、救急要請の判断と適切な情報提供も重要なスキルです。救急隊や医療機関に対して、利用者の状態や既往歴、服薬情報などを簡潔に伝え、スムーズな救急対応につなげる能力が必要です。

このように、デイサービス看護師は「もしも」の事態に備え、常に冷静な判断と迅速な行動ができる対応力を磨いておくことが重要です。

 

デイサービスで働くメリットとデメリット


デイサービスで看護師として働くことには、病院や施設とは異なる特有のメリットとデメリットがあります。医療機関との大きな違いは、急性期の治療よりも予防や生活支援に重点が置かれている点です。

働き方の面では、日勤のみの勤務形態で夜勤がないことが多く、ワークライフバランスを重視する方に向いています。また、同じ利用者と長期的に関わるため、関係性を深めながら継続的なケアを提供できる点も魅力です。

一方で、医療行為の機会が比較的少なく、専門的なスキルを活かせる場面が限られることもあります。また、介護報酬を基にした運営のため、待遇面で病院より低くなる傾向もあります。

これらの特徴を理解した上で、自分のキャリアプランやライフスタイルに合っているかを判断することが大切です。

 

メリット

デイサービスで看護師として働く最大のメリットは、規則的な勤務形態にあります。多くのデイサービスでは日勤のみの勤務となり、夜勤や当直がないため、体力的な負担が少なく、プライベートの時間を確保しやすい環境です。特に家庭との両立を考える子育て中の看護師や、ワークライフバランスを重視する方に適しています。

また、利用者との長期的な関わりも大きな魅力です。病院では短期間で患者が入れ替わることが多いですが、デイサービスでは同じ利用者と月単位、年単位で継続的に関わることができます。そのため信頼関係を築きやすく、小さな変化にも気づける深いケアが可能になります。

業務内容についても、急性期の緊迫した現場とは異なり、比較的落ち着いた環境で看護を提供できます。緊急対応は必要になることもありますが、基本的には計画的なケアが中心となるため、精神的なストレスが少ない傾向にあります。

さらに、多職種と協働する経験を積めることも価値があります。介護士、機能訓練指導員、ケアマネジャーなどさまざまな専門職と連携することで、チームケアの視点や調整能力が身につき、看護師としての幅が広がります。

このように、デイサービスでは生活に寄り添った看護を実践しながら、自分自身の生活も大切にできる働き方が実現できます。

 

デメリット

デイサービスで働く看護師が直面する課題もいくつか存在します。まず医療行為の機会が病院と比べて限定的であることが挙げられます。点滴やさまざまな処置などの高度な医療技術を実践する機会が少ないため、専門的なスキルの維持や向上が難しいと感じる看護師もいます。

給与面も課題となることがあります。デイサービスは介護報酬を基に運営されているため、医療機関と比較すると一般的に給与水準が低くなる傾向があります。キャリアアップによる昇給の幅も限られていることが多いため、長期的な収入面での不安を感じる方もいるでしょう。

また、一人配置のデイサービスも多く、その場合は看護師としての判断や対応をすべて一人で担わなければならない責任の重さがあります。医療機関のように同僚の看護師に相談できる環境がないため、孤立感をもつこともあるでしょう。

さらに、介護業務との線引きが曖昧になりがちな点も課題です。人手不足の状況では、食事介助や排泄介助など本来は介護職の業務も担当することになり、専門性を活かしきれないと感じる場合もあります。

これらのデメリットを理解した上で、自分のキャリアプランや価値観に合っているかを判断することが重要です。

 

デイサービス看護師の1日のスケジュール例


デイサービスでの看護師の1日は、利用者の安全と健康を守るためのさまざまな業務で構成されています。以下に一般的なスケジュール例を紹介します。

 

時間 業務内容 詳細
8:30〜 出勤・準備 朝礼で当日の利用者情報を確認し、特に注意が必要な方の情報を介護スタッフと共有。バイタルチェックの準備や必要な医療器具の点検を実施。
9:00〜 利用者の受け入れ 送迎車で到着した利用者を出迎え、体温や血圧などのバイタルチェックを実施。前日からの体調変化がないか確認し、気になる点は家族やヘルパーから情報収集。
10:00〜 午前の活動サポート 体操やレクリエーション活動中の利用者の様子を観察し、必要に応じて水分補給を促す。この時間を利用して個別の健康相談に応じることもある。
12:00〜 昼食介助・服薬管理 嚥下機能に問題がある利用者の見守りや介助を行い、誤嚥防止に努める。昼食時の薬の管理・服用確認も重要な業務。
13:30〜 午後の活動・処置 入浴介助の際のバイタルチェックや、創傷処置、カテーテル管理などの医療的ケアを実施。
15:30〜 帰宅準備・申し送り 帰宅前の最終的な体調確認を行い、状態変化があった利用者については家族への伝達事項をまとめる。
16:30〜 記録・ミーティング 1日の記録をまとめ、特記事項を翌日のスタッフに申し送る。次回の利用に向けた看護計画の見直しも実施。
17:00 退勤 業務終了

このように、デイサービス看護師の1日は利用者の健康管理を中心に、多職種と連携しながらさまざまな業務をこなしていきます。

 

まとめ


デイサービスにおける看護師の役割は、医療と介護の架け橋として非常に重要です。利用者の健康管理から医療処置、介護スタッフのサポートまで、幅広い業務を担当し、在宅生活を送る高齢者の健康と安全を支えています。

デイサービス看護師には、鋭い観察力と的確な判断力、多職種とのコミュニケーション能力、緊急時の対応力が求められます。メリットとしては規則的な勤務形態や継続的な信頼関係の構築が挙げられる一方、医療行為の機会が限られることや給与面での課題もあります。

デイサービスでの看護は「生活の場での医療」という視点が求められますが、利用者の笑顔や感謝の言葉が直接返ってくる、やりがいのある仕事です。今後も地域医療の重要性が高まる中、デイサービス看護師の役割はさらに注目されていくでしょう。

 

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著者プロフィール

酒井 隆之 株式会社アクタガワHRM コンサルタント

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大学卒業後、静岡県の大手求人情報誌発行会社に営業、制作として従事。 県内のあらゆる業種の求人開拓、詳細なヒアリングからの求人広告を制作。 またグループ会社の人材派遣・紹介会社で営業、コーディネーターを担当。 人材ビジネスに15年以上身を置くその経験と実績から、 転職者の可能性を広げる幅広いサポートを行っている。

監修者プロフィール

東海林 さおり(看護師) 株式会社アクタガワ 看護師スーパーバイザー

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看護師資格修得後、病棟勤務・透析クリニック・精神科で『患者さん一人ひとりに寄り添う看護』の実践を心掛けてきた。また看護師長の経験を活かし現在はナーススーパーバイザーとして看護師からの相談や調整などの看護管理に取り組んでいる。

 

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