看護師のオンコール勤務は違法にならない?手当の相場や待機時の過ごし方を解説

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在宅や施設で過ごす方にとって、夜間や休日の状態の変化は不安なものです。そんなとき、電話で相談できたり駆け付けたりしてくれるオンコール看護師は、心強い存在といえるのではないでしょうか。

看護師にとってはやりがいがある一方で、昼夜問わず緊張状態が続くため、心身に大きな負担がかかります。また人手不足により、頻繁に時間外勤務が依頼されることがあるかもしれません。

この記事では、看護師のオンコール勤務は違法にならないか解説します。手当の相場や待機時の過ごし方などを、体験談も含めて紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

看護師のオンコール勤務とは


オンコール勤務とは、看護師が勤務時間外に緊急時に備えて待機しておくことです。目的は、休日や夜間の「人材確保」と「緊急時の対応」です。病院や介護施設、訪問看護ステーションなど幅広く導入されています。

 

とくに、オペ室や産婦人科などは、休日や夜間に緊急の分娩や手術対応でスタッフを集める必要があるため、出勤が必要になることも少なくありません。

 

介護施設や訪問看護ステーションは、夜間など看護師が不在の場合に電話で連絡し、相談や指示を求められます。場合によっては出勤し、処置や搬送に付き添うなどの対応が必要なことも。

 

オンコール勤務が導入されている訪問看護ステーションの多くは、「緊急時看護加算」の届出をしています。令和5年に全国訪問看護事業協会がおこなった調査によると、緊急時訪問看護加算の届出は89.1%の施設で出されており、多くの事業所で導入されているようです。規模の大きい事業所の場合、当直制が導入されている場合もあります。

 

特定の看護師へ負担が偏ることで、人材確保の難しさや看護師内での不満など、更なる課題が生じるかもしれません。

参考:「訪問看護及び療養通所介護における医療と介護の一体的なサービス提供についての調査研究事業報告書」|一般社団法人全国訪問看護事業協会

 

労働基準法に則ったオンコール勤務の例


労働基準法に則っているかどうかのポイントは、待機している時間が労働時間として扱われるかという点です。労働基準法第32条では、労働時間は「使用者の指揮命令下に置かれている時間」と定義されており、待機中の行動制限の度合いが重要な判断基準となります。

 

たとえば、職場からある程度の距離内にいるよう義務付けられている場合や、定められた時間内に病院で緊急対応が必要な場合などは、待機時間も労働時間とみなされる可能性があります。

 

労働基準法に則ったオンコール体制とは、以下のポイントがあげられます。

 

    • 待機手当が支給されている
    • 待機中の自由な時間が保障されている
    • 回数が適切である
    • 看護師の健康や生活に支障を及ぼさない

 

入職時の条件や、就業規則にオンコール勤務が含まれており、その範囲内で実施される場合は、一般的に違法にはなりません。

 

一方、違法なオンコール勤務にはつぎのようなケースがあります。

 

  • 待機手当や出動手当が支給されない場合

オンコール待機中や実際の出勤に対して支払われるべき賃金の支払いがない場合は、違反になります。

 

  • 過度な待機回数や行動制限がある場合

過剰な頻度のオンコールや、行動の自由が著しく制限される状況(たとえば、自宅での待機を強いられ、私生活に支障が出る場合など)は、違反と判断されることもあります。

 

  • 病院内待機が義務付けられる場合

待機中に自由な時間がほぼなく、拘束時間となるにもかかわらず、手当が支給されない場合も、違法として扱われるケースです。

 

実際に違反となった判例として、令和3年の「アルデバラン事件」があります。訪問看護ステーション「アルデバラン」で働く看護師が、「オンコール待機中は労働時間である」と主張し、賃金の支払いを求めた裁判です。アルデバラン側は「待機時間は労働時間ではない」と主張しましたが、判決では「緊急対応や指定地域内に留まらなければいけない待機時間は労働時間である」と認められました。

こういった違法な働き方をしないためにも、自分自身が労働条件をしっかりと把握し、ときには声をあげる勇気も大切です。

参考:「労働基準法」|厚生労働省

参考:「残業代等未払賃金請求事件」|全国労働基準関係団体連合会

 

オンコール勤務は拒否できる?

多くの医療機関でオンコール勤務は業務の一環として位置づけられており、明確な理由がない場合は、拒否は難しいでしょう。しかし、特定の場合において、拒否できるケースもあります。

 

拒否できるケースの一つが、健康上の理由や家庭の事情です。とくに、これまでオンコール勤務をしていた方が、睡眠不足などが原因で心身に不調を訴えた場合には、勤務が免除されるかもしれません。また、育児や家族の介護など、やむを得ない事情がある場合も拒否できることがあるでしょう。

 

もう一つは、就業規則や職場の規定で、オンコール勤務が明確に義務づけられていない場合です。入職時に説明がなかったにもかかわらず、突然オンコール勤務を命じられた場合には、拒否できる可能性が高まります。そのときは、必ず契約内容の確認をしておきましょう。

 

労働時間は、使用者の指揮命令下に置かれている時間です。オンコール待機時間がこの労働時間にあたるかは、待機中に行動の制限が生じていることや、上司の指示があるかが重要な判断ポイントです。健康上の理由や家庭の事情が正当と認められる場合には、法律に基づき特例が適用されることもあります。

正当な理由を申し出たのにもかかわらず、オンコール勤務の免除がされない場合には、労働基準監督署へ相談してもよいでしょう。

 

気を付けたいことのひとつが、看護師の人数が少ない職場において、オンコール勤務を拒否した場合、職場全体に影響が出る可能性です。代替要員の確保や同僚の負担が増加するなど、体制が整うまでは、ほかのスタッフへのしわ寄せが大きくなります。そのことで、職場内から不満が出たり、摩擦が生じたりする可能性もあり、居心地が悪くなってしまうことも…。

拒否を検討する場合は、周囲への配慮を忘れず、職場と十分に話し合うことが大切です。事情を丁寧に説明し、ほかの勤務形態や代替案について話し合い、譲歩する姿勢も大切です。お互いが納得できる解決策を見つけていきましょう。

 

オンコール手当の相場


オンコール中に実際に業務をおこなった時間は労働時間です。法律で定められた労働時間(8時間/日、40時間/週)をこえた場合や、時間外の労働が生じた場合には、労働基準法に基づいて、適切な割増賃金が支払われます。また、時間外や深夜(午後10時~午前5時まで)に労働させた場合には、割増料金を支払う必要があると、労働基準法に定められています。当然、オンコール勤務をして出勤した場合には手当が支払われるでしょう。

手当については、明確に定められた法律はありません。待機中に電話対応などが発生しなかった場合には賃金が支払われないケースもあります。支払い方法や金額は事業所により異なるため、就業規則の確認や入職時の条件のすり合わせを十分おこなう必要があります。

参考:「労働基準法上の労働時間法制について」|厚生労働省

 

オンコール手当は、待機時間に対して支給される「待機手当」と、実際に呼び出されて勤務した場合に支給される「呼び出し手当」に分けられるケースが多いです。下記はオンコール手当の一般的な相場となっています。

 

休日のオンコール待機手当の平均

手当の支給は各事業所により異なるため、第2担当者にも手当がつくのかどうかは事業所の規定に委ねられます。

参考:「訪問看護ステーションにおける24時間対応体制に関する調査研究事業報告書」|一般社団法人全国訪問看護事業協会

 

日のオンコール出勤手当の平均

休日にオンコールで呼び出されて出勤した場合の手当は、通常の時給に加えて、別途支給されることが一般的です。出勤手当は、1時間あたり2,000円から5,000円程度が相場であるといわれています。定額で5,000円~10,000円が支給されることもあるようです。

オンコール出勤手当の金額は、事業所の経営状況や利用者数、サービス料金が大きく影響されます。利用者が多く、サービス料金が高く設定されている事業所では、手厚い手当が支給される傾向もあるようです。

 

呼び出し時に支給される手当

多くの職場では、呼び出された時間に応じた時給が支払われるか、あるいは1回あたり5,000円~10,000円程度の定額手当が支給されます。

 

ただし、これらの手当の金額や支給条件は職場によって異なるため、事前に雇用契約や就業規則を確認しておくことが重要です。また、交通費が別途支給される場合もあるため、呼び出しが頻繁に発生する職場では、これらの条件をしっかり把握しておくと安心です。

 

オンコール勤務は労働時間に含まれる?


オンコール勤務の待機時間の扱い

看護師のオンコール待機時間は、勤務時間にはカウントされません。

しかし、勤務時間外ではありますが、制限が生じるため精神面での負担は大きいものです。また、オンコール勤務の回数そのものを規定する法律はなく、職場や看護師の人数により回数もまちまちです。

 

労働基準法の原則に基づき、オンコール勤務を導入している事業者には、労働者の労働時間や休息時間の管理が求められます。しかし、法律で細かく規定されているわけではないため、職場ごとにルールが決められている状況です。

 

全国訪問看護事業協会の調査によると、約6割の事業所において、オンコール対応をする看護師の負担を軽減する取り組みがされています。取り組み内容として、夜間対応した翌日の勤務体制の調整、オンコール対応者のフォロー体制、タブレット・スマートフォンなどICTの活用などがあるようです。事業者側もオンコール対応をする看護師の労働環境を改善するためにさまざまな手を尽くしていることがわかります。

参考:「訪問看護及び療養通所介護における医療と介護の一体的なサービス提供についての調査研究事業 報告書|一般社団法人全国訪問看護事業協会

 

オンコール待機時間の過ごし方

オンコール勤務中の待機時間は自宅で自由に過ごせます。休日なので家族との時間や趣味を楽しんで過ごしたいですよね。しかし、万が一の緊急呼び出しに備えて準備をしておく必要はあります。

オンコール待機時間の過ごし方の注意点は以下の3つです。

 

  • すぐ動けるように準備する

オンコール勤務は突然呼び出されるため、患者さんの状態もある程度緊急性が高いものです。そのため、できるだけ早く職場に到着できるようにしておくとよいでしょう。一般的には、職場から30分以内で到着できる場所にいることが望ましいです。また、携帯電話は着信音をオンにしておき、職場からの連絡にすぐに気が付くようにしておきましょう。休日はゆっくり部屋着で過ごしたいですが、最低限の身だしなみや持ち物を準備しておくと安心です。

 

  • 飲酒を避ける

せっかくの休みは、お酒を飲んでリラックスしたいですよね。ただ、オンコール勤務中は、飲酒は控えましょう。アルコールは判断力を鈍らせ、緊急時の対応に支障を及ぼすことも…。交通手段が車の場合には、家族に送迎を依頼したりタクシーを手配したりするなどスムーズに動けなくなってしまいます。また、緊急対応する看護師からアルコールの臭いがしたら、患者さんやご家族からいいイメージはもたれませんよね。万が一患者さんの命にかかわることであれば、悔いが残ることもあるでしょう。適切な判断をするためにも、飲酒のリスク管理は必須といえます。

 

  • 予定は控えめに

遠方への外出や電話が取れないといった状況は避けるようにします。行動範囲は制限されますが、自宅近くで過ごすのが安心です。しかし、職場の近くにいたとしても、映画鑑賞やコンサートなどは対応が遅れがちになります。家族にも協力してもらい、自宅を中心にリフレッシュできる過ごし方がよいですね。

 

実際にオンコールで呼び出された方の体験談

オンコール勤務についてよく聞かれるのは、「急な呼び出しがどのような状況で発生するのか」という疑問です。

ある日のこと、深夜2時に病院から電話があり、急患の受け入れに対応するためすぐに駆けつけるよう依頼がありました。病院までは車で約30分の距離。眠気を振り払いながら急いで準備し、病院へ向かいました。

到着後は医師や他のスタッフと連携しながら緊急手術のサポートを行いました。オンコールの現場ではスピード感や的確な判断が求められるため、日頃から業務内容をしっかり把握しておくことが大切だと改めて感じました。

 

このような経験は心身の負担が大きい一方で、「患者さんの命を救うために貢献できた」という大きな達成感を得ることもできます。オンコールの勤務が発生する職場では、緊急時に備えて準備をしておくことが大切です。

 

オンコール勤務の頻度


オンコール勤務の頻度は、施設の種類や看護師の在籍人数により大きく異なります。全国訪問看護事業協会の調査では、事業所における看護師(保健師を含む)の常勤換算人数は「3 人以上 4人未満」が 17.9%で最も多く、「4人以上5人未満」が14.4%となっています。この人数の中で、オンコール勤務ができない看護師がいた場合は、オンコール回数が週2回以上となる可能性は高まるでしょう。

 

日本看護協会の訪問看護実態調査報告書によると、平均オンコール待機回数はフルタイム勤務正職員で月に9.6回です。そのなかで、実際に出勤が必要となった回数は1~2回が多いとされています。

 

オンコールの対応回数は、患者さんの状態によって変動します。状態が変化しやすいターミナル期の患者さんのケアを受け入れている事業所であれば、夜間の電話対応や、出勤回数が増えることも予想できるのではないでしょうか。

参考:「訪問看護及び療養通所介護における医療と介護の一体的なサービス提供についての調査研究事業報告書|一般社団法人全国訪問看護事業協会

参考:「2014年訪問看護実態調査報告書」|公益社団法人日本看護協会医療政策部

 

夜間オンコールは眠れない?ストレス対処方法

夜間のオンコール勤務は、呼び出しがいつあるかわからない緊張感から、強いストレスを抱いたり、十分に休めなかったりする場合もあります。しかし、訪問看護や介護施設の現場では、オンコール勤務の対応は大切な業務のひとつです。

普段どおりの休息は難しいかもしれませんが、リラックスして過ごせる方法をご紹介します。

 

  • リラックスする時間をもつ

落ち着かない時間の中でも、読書や軽い運動、ストレッチなど心身をリフレッシュさせる時間をとってみてはいかがでしょうか。普段は忙しく、なかなか自分の時間を作れない人は、ゆったりと過ごす時間を作ることで、満足感を味わえます。オンコールの日にだけやる、特別な趣味を持つのもいいかもしれませんね。

 

  • 睡眠環境を整える

寝ている間に連絡があっても気が付けるように、夜間も携帯電話の音は聞こえるようにしておきましょう。睡眠中でもすぐ起きられるように、音量を大きくしておくと安心です。家族が同じ部屋で寝ている場合には、大きな着信音にするか悩むこともあるでしょう。スマートウォッチの振動などを利用し、自分だけ気が付くようにすることもできます。家族の睡眠を妨げる心配がなくなれば、自分自身も少し気持ちが楽になります。

 

  • オンコール勤務への気持ちの持ち方

心身ともに負担の大きいオンコール勤務ですが、患者さんのためには、なくてはならない制度です。家族や入所者さんが急変して不安なときに、判断能力のある看護師のアドバイスはとても心強いものです。自分の仕事が誰かの助けになっていると考えることで、やりがいにもつながります。ポジティブな気持ちで対応す

れば、患者さんやほかのスタッフからの信頼もより厚くなるでしょう。

夜間や休日の出勤になれば家族の理解も欠かせません。看護師の仕事に誇りをもち前向きに取り組む姿は、家族の理解や協力を得られやすいのではないでしょうか。

 

まとめ


看護師のオンコール勤務は、在宅や施設で療養する方にとって、心のよりどころとなるものです。的確な判断や緊急対応などが求められ、これまでの看護師経験で培った知識や経験を存分に活かせる仕事です。

 

一方で、健康面の不安がある方や、育児・介護中の方にとってはオンコール対応が難しいこともあります。訪問看護や介護施設などへ転職する場合には、オンコールの有無や業務内容を事前に確認しておきましょう。

 

しかし、求人情報を見ただけでは、オンコール勤務についてわからないことがあるかもしれません。そんなときは「ふじのくに静岡看護師求人ナビ」の看護師の転職に詳しいアドバイザーへ相談してみましょう。オンコール対応あり・なしの求人を希望に合わせて紹介することができます。

 

オンコール勤務が必要な職場は、大変ながらやりがいもあります。

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監修者プロフィール

東海林 さおり(看護師) 株式会社アクタガワ 看護師スーパーバイザー

東海林 さおり(看護師) イメージ

看護師資格修得後、病棟勤務・透析クリニック・精神科で『患者さん一人ひとりに寄り添う看護』の実践を心掛けてきた。また看護師長の経験を活かし現在はナーススーパーバイザーとして看護師からの相談や調整などの看護管理に取り組んでいる。

 


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