現代社会では、医療機関へのクレームが多様化している問題があります。クレームが多様化しているのは、社会環境の変化が挙げられるでしょう。医療現場はそれぞれの対応に追われており、トラブルを抱える看護師は少なくありません。今回のコラムでは、医療機関へのクレーム増加の背景や、クレーム内容についてご紹介いたします。
Contents
医療機関へのクレーム増加の要因
医療機関へのクレーム増加の要因として、IT・インターネットの普及が挙げられます。ITの導入で電子カルテが一般的になりつつあり、高いレベルのサービスが求められるためです。
迅速な対応が求められる
医療機関でIT化が進むメリットは、瞬時に必要なデータが取り出せる点です。受付や診察室、検査など幅広い場面で、必要な情報を取り出すことができます。今では、レントゲンやCTなどの検査でIT化が進んでいるため、検査結果が出るまで時間がかかりません。また、予約システムに対応し、診察の待ち時間を減らす対策も可能です。このような状況において患者さんは、スムーズな対応を求めるでしょう。予約するのが当たり前になっている患者さんがいれば、長時間待たされてクレームを言うのは当然です。できるだけ病院側が患者さんの負担を減らす対策を行っていないと、クレームの原因となります。
医療現場による教育体制の違い
医療現場のIT化は、どんどん新しい技術が入ってきています。それに伴い、当然現場の教育体制も強化していかなければならないでしょう。病院側は、スタッフの教育機会を設けなければならい問題があります。とくに小規模な医療機関ではIT化が遅れており、どの病院も一元化されたサービスが受けられず、患者さんの不満の元となる場合があります。
医療機関の評価ポイント
医療機関の評価を上げるポイントは、患者さんやご家族からのニーズやウォンツ・クレームに対処できるかがカギになってきます。
患者さんのニーズ
例えば、患者さんが病院に求めるニーズは、病気を治すことでしょう。どこか具合が悪いため、その問題を治すために患者さんは病院に来ています。しかし、単に病気を治すだけでは、患者さんのウォンツに応えることはできません。
患者さんのウォンツ
患者さんのウォンツとは、どのような状況を望んでいるかという点です。病気を治すだけなら、どの病院でも対応できますが、患者さんがその病院を選んだのは理由があります。もしかしたら、看護師との何気ない会話で安心感が得られて、ほっとできているのかもしれません。話しやすい看護師がいるから、その病院を選んだという場合もあるでしょう。患者さんのウォンツに応えるためには、マニュアルにはない対応が求められます。業務的な対応だけでは、多くの人を満足させることはできません。看護師は医療に関する会話だけでなく、その人の考えを引き出せる日常会話を大切にしましょう。何気ない会話の中で、「あの病院は行きやすい」「あそこなら安心」だと感じてもらえるのです。または、日常会話の中で、患者さんの本当の希望を聞き出せるかもしれません。
クレーム事例
医療機関では、患者さんやご家族からのクレームが増加しています。クレーム内容は多様化しており、中には悪質な対応をする患者さんもいるため、注意が必要です。
インターネットでの情報収集
例えば、最近多いクレームの要因として挙げられるのが、患者さんの自己判断による問題です。インターネットを利用すれば、一般の人でも医療情報を簡単に得られるようになりました。ところがそれらの情報は正しいとは限らず、患者さん自身が勘違いする恐れもあります。患者さんがインターネットの情報を鵜呑みにしてしまうと、ニーズとは違う治療内容になってしまい、クレームの原因になるでしょう。
認識のずれ
医療者と患者さんとの認識にずれが生じてしまい、クレームに繋がるケースもあります。完治が難しいと医療者が説明しても、認識が異なれば「完治させて欲しい」と患者さんは言うでしょう。病気とうまく付き合っていけるか不安が解消されておらず、期待度に相違があると判断できます。
待ち時間や職員の対応
外来患者さんからのクレームで多いのは、待ち時間の問題や職員の対応トラブルです。急患を優先することで、患者さんを長く待たせてしまう恐れがあります。看護師や医師が少ない病院では、短い時間で患者さんに対応できず、時間がかかる場合もあるでしょう。スタッフの対応も、説明がわからない、質問に答えてくれない、言葉使いに不満があるなどのトラブル事例があります。
会計のトラブル
会計の問題では、支払い金額でクレームが入る場合があるでしょう。明細書の見方がわからない、支払い金額が高すぎる、金額に間違いがあるなどのクレームです。きちんと説明すればわかる問題ですが、たくさんの患者さんが会計で待たされている状況だと、なかなか1人ひとりに対応できない場合があります。
病院や看護師の雰囲気
病院や看護師の雰囲気自体が、患者さんのクレームに繋がるケースもあります。暗く清潔感がない病院では、患者さんが「適切な医療を提供できないのではないか」という不安が起きやすいでしょう。古い病院であっても、照明を明るくするなど対応方法はあります。看護師がハキハキ答えないと、活動的な病院だと感じられない可能性もあります。いつも無表情で対応する看護師がいれば、患者さんが不安を感じてもおかしくはありません。
ナースコールの問題
入院患者さんからのクレームでは、ナースコールの対応が挙げられるでしょう。ナースコールを押してもすぐに看護師が来てくれないと、患者さんは不安を感じてしまいます。後回しにされた感じもするため、病院全体のサービスの質の問題に発展するかもしれません。
続きとして、『看護師のためのクレーム対応マニュアル3』はこちら
まとめ
病院に寄せられる患者さんのクレームは、多様化していることがわかります。ここまで多様化している背景には、IT化の導入が挙げられるでしょう。病院側はIT化で高いサービスが求められていますが、すべての医療機関で対応できるとは限りません。患者さん自身が、インターネットで情報を得て間違ったサービスを求める場合もあります。クレームの多くは、患者さんが求める要素と医療機関とにずれが生じているためです。どんなに小さなクレームにも耳を傾けることで、満足度を高めることができるでしょう。看護師は「クレーム」と考えるのではなく、患者さんの隠れた欲求を予測することが大切です。
ライター情報
小林・40代