ACP(アドバンス・ケア・プランニング)とは何なのか、看護とどう関係があるのかその役割を紹介します。
これから注目される医療の形で、看護師に求められる役割があります。
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ACP アドバンス・ケア・プランニングと看護
看護師の経験がある方なら、アドバンス・ケア・プランニングという言葉を聞いたことがあるでしょう。
この記事では、アドバンス・ケア・プランニングと看護の役割について、正しい理解が得られる情報を紹介しています。
看護の知識を広めて、業務に役立てたいと考えている方は、これから紹介する内容を参考にしてください。
まずは、アドバンス・ケア・プランニングの意味から解説していきます。
簡単に説明すると、意思決定能力が低くなった際の医療や介護のあり方をどうするか、本人の代わりに決める人を選定しておき書類に明記することです。
意思決定能力がなくなる前から本人を交えて話し合うことができるため、自分の終末期をどうするか明確にすることができるでしょう。
日本ではアドバンス・ケア・プランニングの作成を法律で定められているわけではありませんが、本人の希望を重視した看護には欠かせないものとなっています。
看護師にどのような役割があるのかは、次の項目から詳しく解説していきます。
ACP アドバンス・ケア・プランニングにおける看護の役割
アドバンス・ケア・プランニングにおける看護の役割は、以下の3つです。
- 患者や家族との信頼関係を構築する
- 適切なACPプロセスなのか確認する
- 患者が望む医療・ケアを受けられる支援をする
アドバンス・ケア・プランニングの作成は看護師もかかわっており、看護のプロの立場からアドバイスや支援をしていく必要があります。
終末期の医療や介護で重要なのは、本人らしい過ごし方をすることです。
どのようなプロセスが正解ということはなく、本人が何を重視して過ごしたいのかを聞き出し、看護師はその内容に従った支援をする立場にあります。
看護の役割①患者、家族と信頼関係を構築
看護師はアドバンス・ケア・プランニングの作成において、患者さん本人にどんな価値があるのか意思決定できるよう説明し、表情や言葉から患者さんの思いを共有する役割があります。また、家族が介入した際にも同じような対応をしなければなりません。
患者さんが終末期において何を重視するかは人それぞれで、家族に負担をかけたくない、家族との時間を大切にしたい、自分の病状を理解しておきたいなどさまざまです。
看護師は患者さんがどの価値観を大切にしているか考えるきっかけを与え、また患者さんの価値観を家族に説明して理解してもらう役割があります。
どのような価値観を重視するかは簡単に決めることができないので、看護師は普段のケアを通して会話をしながら、患者さんがどのような生き方をしてきたのか、病に対してどんな意見をもっているのか、どのような生きがいをもっているのか聞き出すようにします。
このように、看護師は患者・家族との信頼関係を構築していかなければなりません。
ときには意思決定のための情報を提供し、適切な選択ができるようにしていきます。
状況によっては延命が難しいこともありますが、患者さんや家族の考え方のゆらぎを理解し、心に寄り添う看護を心がけるようにしましょう。
看護の役割②適切なACPのプロセスを辿っているか確認
アドバンス・ケア・プランニングの作成や実施は、患者さんや家族だけでなく、看護師と医師のチームで連携しなければなりません。
プランを作成してからも定期的に話し合いや確認が必要で、初回面談だけで終わらせるのではなく、数か月や数日おきに面談を実施し看護師は適切なプロセスを辿っているか確認する役割があります。
病状やアドバンス・ケア・プランニングの必要性は医師が説明しますが、患者さんの表情を読み取り、患者さんの希望に沿ったものに進められているかを知るには看護師の役割が重要となります。
看護師は患者さんや家族の代弁者となる役割で、医療の知識がない患者さんや家族の代わりにアドバンス・ケア・プランニングのプロセスが正しいのか確認しなければなりません。
看護の役割③患者が望む医療・ケアをうけその人らしく生き抜く支援
終末期において、患者さんが何を重視するかは異なっており、適切な医療を受けながらその人らしい過ごし方ができるよう、看護師は支援していく役割があります。
たとえば、人工呼吸器で延命が可能であっても、家族との話ができなくなることに不安を感じる患者さんがいるとすれば、最後まで話ができる状況を支援しなければなりません。
たとえそれが死期を早めることになっても、患者さんが望む最後をかなえられるよう、看護師は適切な最後となるよう努めるようにしましょう。
ただし、患者さんが人工呼吸器をつけるのを嫌がる場合でも、呼吸困難で患者さんの苦痛が増すようなら別の対処が必要かもしれません。
できるだけ不快なものを取り除きながら、患者さんや家族の思いをかなえるよう導くようにしてください。
現在のACP アドバンス・ケア・プランニングの事例
日本国内において、アドバンス・ケア・プランニングを活用した事例がいくつかあります。患者さんや家族にとって最適な終末期を過ごせるようにするため、事例を参考にしてみてください。
すべて話しておきたい願いをかなえた実例
80歳女性で癌を患い、余命は数か月となり緩和外来を受けた実例があります。緩和ケア病院には数度の入退院を繰り返し、5か月後に亡くなられました。
80歳の女性は自分が死んだ後に長女が決断に困らないよう、話したいことは話しておきたいという希望がありました。
しかし、長女は死を受け入れることができず、話を聞く状態ではありません。
そこで看護師が長女の気持ちに寄り添いながらACPの必要性を数回にわたり説明することで同意が得られ、80歳女性の気持ちを伝えることができました。
80歳女性はほっとした様子を見せ、長女は母の思いを理解し、お互いに最善となる終末期を迎えることができています。
緩和ケアスクリーニングを実施している実例
国内の癌専門病院では、患者さんに自分の気持ちを書いてもらう用紙を渡している事例があります。
用紙に書く内容は、治療方針を決めるものではなく、患者さん自身の気持ちを整理して確認するものとして活用されています。
患者さんが回答に困らないようチェック項目を採用し、終末期をどう過ごしたいのか、治療をどのように進めていきたいのかなどの回答がある用紙です。
この病院で質問用紙を患者さんに渡す理由は、患者さんの価値観や気持ちを医師や看護師に伝えられるようにするためです。
書いた内容は家族に見せなくてもよく、本人が書けないときは家族が代弁することもできるようにしています。
最後を家族と過ごせた実例
80代の男性で脳梗塞により麻痺が残った方にアドバンス・ケア・プランニングを実施し、患者さん本人の希望をかなえた実例があります。
ある日患者さんが肺炎を患ってしまい入院となり、経管栄養をするかどうか家族は選択に迫られることになります。
しかし、娘さんは父親の性格を考え拒否するのではないかと思い、看護師や施設のリーダーと話し合いながら、最後にどうするか決めることができました。
施設のスタッフは娘さんが知らない父のストーリーを聞き出しており、その内容をきっかけに父の残りの時間を本人らしく過ごさせてあげたい思いから、自宅で過ごすことに決めました。
1か月間と短い間でしたが、父親と過ごすことができ、最後まで生き切った父親の様子を見て満足できる最後を迎えることができています。
アドバンス・ケア・プランニングと看護師のこれから
厚生労働省が提供する「人生会議」では、著名人のACPについてのコメントがあります。
そのなかから、タレントの小籔千豊さんのコメントを紹介します。
「母親は50代で亡くなったが、その時に、『こんなに身近にいた人ともう二度と話せなくなるのか』とやるせない気持ちになったことを覚えています。もしこれから家族が亡くなるとしたら本人の希望通りに看取りたいし、その後のことについても意思を知っておきたいと思います。」
彼のコメントにあるように、これからの時代は自分らしい生き方が重視されるのではないでしょうか。
本人だけでなく家族にとっても悔いのない最後が過ごせるよう、看護師は支援していきたいものです。
まとめ:アドバンス・ケア・プランニングと看護の在り方
アドバンス・ケア・プランニングを実施している医療機関はまだ少ない現状があります。
しかし、看護師が知識としてもっておくことで、患者さんや家族に寄り添う看護を提供できるようになるでしょう。正しい知識を得るようにして、看護の現場で活かすようにしてください。
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