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高次脳機能障害とは
事故などの外傷により、けがや病気によって脳に損傷を負い、知的な機能に障害が出て日常生活や社会生活に支障を来す状態を指します。
高次脳機能障害の症状
記憶障害・注意障害・遂行機能障害・社会的行動障害・自己認識の低下・失行症に分類されています。
記憶障害
4つの症状が主になります。
前向性健忘
発症後に新たに経験したことや新しいことが思い出せなくなる状態になる
逆行性健忘
発症前に経験したこと(家族や友達の名前)思い出せなくなった状態になる(新しく知る人などは覚えられる)
短期記憶障害
読書や計算などの時に使われる、短い時間の記憶が障害されるため、少し前に食べた食事などを忘れる
長期記憶障害
今まで経験したことを永続的に保持される能力が失われるため、トイレの仕方、家の場所などを忘れる
注意障害
4つの症状が主になります。
覚醒度低下
表情が乏しくなり(無表情に近い)反応が鈍くぼーっとしてしまう
持続力低下
周りの音に注意がいき、集中力が低下してしまい本来のものを見失ってしまう
転導性低下
持続力低下とは逆に、周りの音、会話などに注意がいかずに、行動へうまく移れなくなってしまう
転換性注意力低下
その時の状況に応じた注意の変換がうまくできないために、同じような行動を繰り返したり、同じことを何度も言ってしまう
遂行機能障害
論理的に考えたり、計画を立てて問題を解決し、推察して行動するといったことができない症状です。また、自分の行動を評価したり、分析することもできない状態であり、自分で計画を立てることができない、指示してもらわないと何もできない、物事の優先順位をつけられない、効率よく仕事をこなすことができないなどの行動がみられる
社会的行動障害
興奮する、暴力を振るう、すぐに怒ったり、笑ったり、お金を使い切ってしまったり、場違いな行動や発言をしたり、思い通りにならないと、大声を出す。 適切な場面に合わせて感情や行動をコントロールできなくなった状態です。自己中心的で、じっとしていられないなどの症状がみられる
自己認識の低下
病識の欠如とも言われており「自分が障害を持っている」ことに対する認識が上手くできない、冷静に判断が出来ないため、上手くいかないのは相手のせいだと考えている、自分自身の障害や治療などを拒否する、必要なリハビリや治療などを拒否してしまう症状がみられます。
失行症
運動できる体の機能が備わっているにも関わらずに、日常的な動作ができなくなってしまった状態は、失行症の可能性が疑われます。
例えば・・・箸やスプーン・歯ブラシが使えない、ジェスチャーができない、動さ緩慢だったり動きがぎこちなく見える
高次脳機能障害のリハビリについて
医師以外に、言語聴覚士、作業療法士、臨床心理士など多くのスタッフが連携・協力してリハビリ内容を考え、高次脳機能障害の治療の基本は、患者さんに合わせ、患者さんへの指導が行われます。実際にリハビリを続けていくうえで、家族や職場・学校など周囲の人の理解と協力が絶対に欠かせません。脳は、適切な方法で働かせることで、損傷を受けた部位の代わりとなる新たなネットワークをつくり、機能を回復させることが可能です。それぞれの患者さんに合った方法・ペースで残っている脳の機能を働かせることで、適切な回復に導くことができます。
記憶障害の場合
手帳やカレンダー、パソコン、スマートフォンなどにメモをとったり、スケジュールを記入する習慣を身に着けいつでも思い出しやすい環境をみにつけます。
注意・遂行障害の場合
1つの作業を終えてから次に進むようにしたり、静かな環境に身を置き、集中しやすくします。目につくところに、仕事の順序を書いた紙などを貼っておくのも有効な方法です。
社会的行動障害の場合
怒りっぽくなったり、相手の気持ちがわからなくなるといった症状が現れやすいため、対人関係のトラブルが起こりやすくなります。なぜそうなったのかを、家族や周囲の人と一緒になって考えて、その原因を取り除くようにします。また、うつ病や不安症などの精神疾患に用いられる認知行動療法を応用した治療も有効と考えられています。
看護計画を作成する際には、患者さんにあった個別性がある計画を作成することが、重要です。
高次脳機能障害に関する看護研究
#回復期の高次脳機能障害患者に対する看護実践において熟練看護師が感じる倫理的問題 著者:春木 邦恵 2017年-09-20
#高次脳機能障害者の家族介護者が抱える困難さに関する研究 著者:金 美順
#青年期にある外傷性高次脳機能障害者の就労維持に伴う障害受容のプロセス 著者:塚原 節子
まとめ
高次脳機能障害のある患者さんと関わる機会では、それぞれの症状を把握し患者さんのペースに合わせた関わり方が必要です。はじめは戸惑うことも多いかもしれませんが、関わり方に悩んだときにはほかの先輩看護師やリハビリスタッフ、家族とカンファレンスを行いながら、情報共有を行うことで患者さんの回復効果があがってくると思います。
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