発達障害の患者さんの関わり方・看護方法について

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kango

 

発達障害の診断技術が向上し、発達障害児と診断される子どもが増えてきています。

発達障害児・発達障碍者にかかわる看護師には正しい知識を身に付けて看護に臨むことが必要です。

今回は、発達障害の患者さんにかかわる際に必要な知識、看護計画・研究についてまとめました。

 

看護師が抑えたい発達障害とは

 

今回は、発達障害について全体の概要をお伝えします。

発達障害の症状や看護の方法について正しい知識を身に付けることで、普段の看護に活かせるようになるでしょう。

 

発達障害全般について

 

広く発達障害とは、脳の気質的・機能的障害により、学習障害・コミュニケーション能力や社会性が欠如する病態です。

発達障害は遺伝的要因が強く、持って生まれたものなのです。

男児に罹患率が高いことは特徴であり合併例も多く、ADHDとADなど複数の障害を併せ持つケースもありますが、知的障害は必須ではありません。

 

発達障害の原因

 

原因となる疾患は以下の通りです。

・脳性まひ・知的障害・ろうなどで2.5%
・ADHD(注意欠陥多動障害)・ASD(自閉症スペクトラム障害)・LD(学習障害)で6.5%
合計9%

小児全体の10人に一人、学校のクラスでいえば一クラスに1~2人はなんらかの発達障害がある状態といえます。

LD(学習障害)・ADHD・ASDなども遺伝性のもの。発達障害児は父親の25~30%、母親の15~20%、きょうだいの25~35%、一卵性双生児の場合は20~54%に発達障害があるといわれています。

 

診断の時期

 

出産時のトラブルによる脳性まひなどは出生後ほとんどすぐに診断されるのです。

LDやADHD、ASDは生まれてすぐではなく、成長の過程で発見されます。

たとえば2~3歳の乳児・幼児検診で保健師から指摘されるケースも多く、大人と目が合わない、声をかけても反応しない、他の子どもとかかわろうとしないなどがあげられます。

小児は月齢や年齢に応じた発達課題があります。

他者とのコミュニケーション能力はある程度発達が進み、社会で他者とかかわる年齢にならなければ、発達障害があるかどうかは気づかれにくいのです。

子どもの成長過程で、大人の指示がうまく入らない・集団に入れない・衝動的・生活習慣が身についていない等で初めは気になる子として発見され、小児科受診に繋がり発達障害が診断されます。

診断後は病態により、薬物療法などが取り入れられるケースもあるのです。

 

発達障害が子どもの与える影響

 

発達障害は子どもが社会生活を営む上で、障壁となることが多く、保育園や幼稚園でなじめない、小学校でいじめにあったり勉強についていけず不登校となるケースもあります。

また、養育の難しさから親からの虐待を受ける確率も高くなります。親子関係は看護師も観察しておかなければなりません。

子どもの発達障害は正しく診断され、周囲の理解があり、関わりを間違わなければ症状の悪化は少ないものです。

社会性の欠如があることから周囲の子どもから虐めを受けたり親の無理解から虐待を受けると、自己肯定感が低くなり、成長過程でうつ病などを発症するケースもあるのです。

看護師は、発達障害のある子どもの精神状態や周囲とのかかわりがどのようなものか、注意深く観察する必要があるでしょう。

発達障害がある方にとって必要なのは、周囲が対象者の病態を理解することと、正しい関わりであることを忘れてはならないのです。

 

看護師が抑えたい発達障害の種類

 

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発達障害は病型に応じていくつかに分類されます。代表的な疾患とその症状等についてくわしく解説していきます。

 

自閉症スペクトラム障害(ASD)

 

自閉症スペクトラム症は、対人関係においては人の表情から気持ちを察したり、話すべきタイミングで話すなどコミュニケーションをとることが難しい状態です。

一方、音や秩序に関して敏感であったり、一つのことに強いこだわりを持つといった症状がみられます。

重症度は個人差があり、重傷の知的障害を合併するものから、高いIQがあり一度で聞いたことを覚えるなど様々なケースがあるのです。

原因は脳の機能障害といわれてきましたが、最近では脳内でドーパミン受容体の減少があるという研究結果もあります。

乳児期には抱っこしにくい・後追いをしない・目が合わない・音や他人からの接触に敏感として、早ければ生後生後6か月ごろから遅くとも3歳ごろまでに診断がつくことは多いのです。

LDやADHD・発達性運動強調症(DCD)・不安・抑うつが併存することが多く、の罹患率は1%。また、睡眠障害やてんかん、便秘を合併しやすいともいわれています。

 

ADHD(注意欠如・多動障害)

症状

ADHDは、注意力の欠如・じっとしていられない多動を併せ持つ障害です。症状を以下に記します。

・注意力欠如…「忘れ物が多い」「片付けられない」「ケアレスミスが多い」「課題をやり遂げられない」
・多動……「落ち着きがない」「じっとしていられない」「活動に参加できない」

多動ではありますが、行動の攻撃性はありません。LDを合併することが多いのです。

 

病態

前頭葉における神経物質の障害であり、脳内の神経細胞、シナプスの働きは低下します。

意思決定をつかさどる小脳の線条体が小さい場合があるとの研究結果もあります。

 

危険因子

低出生体重児、乳児期の脳の感染症・鉄欠乏、母体の妊娠中の喫煙・飲酒などがありますが、危険因子を持つすべての妊婦が当てはまるわけではありせん。

乳児検診で発見されることもありますが、学習に支障が出る学童期まで気づかれない場合もあるのです。

 

予後

正しく診断・病態に合った薬物療法などの治療されるか、病態に合ったかかわりをしていけば思春期から成人にかけて軽快することも多いのです。

しかし、行為障害から周囲の大人から叱責を受け続けると自尊感情が低下し、思春期に非行に走ったり、失業率が高い・事故に遭いやすいなどの結果となる場合もあります。

 

学習障害(LD)

 

症状

学習障害とは「話す」「聞く」「読む」「書く」「計算する」などの学習能力に障害が出る病態です。

話す・聞くなどはコミュニケーションに影響を及ぼすため、り患した子どもが就学期になると人間関係に問題が出てくるケースが多くなってきます。

 

病態

先天的な学習領域の脳の機能障害によるものですが、この原因は、母親の妊娠中の薬物接種や高血圧、低栄養が引き金になるのではないかといわれています。

しかし、全て母体に原因があるともいえません。

鑑別が必要な疾患に脳腫瘍があります。LDの診断時にCTなどを撮影しているかの確認は必要です。

 

治療

今のところ治癒の方法は確立していません。

読み書き計算など、どの障害が出るのかは種類や程度は個々の脳の働きによって異なります。

ASD・ADHDを併発するケースも多いのです。

 

予後

LD害で幼少期には生活への支障はありませんが、小学生になると学校の授業が理解できず、気分の落ち込みやうつ状態になり、不登校の原因となるケースもあります。

治癒がないため、家族や本人の病識がどこまであるのかが予後に影響してきます。

 

発達障害の看護計画・効果的なかかわりについて

 

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ここでは、発達障害がある方と関わる場合の看護計画について触れます。

疾患の理解とそれぞれの病態に合ったコミュニケーションが看護のカギとなってくるでしょう。

 

看護目標

 

看護目標は、対象者や家族の不安が軽減し、子どもであればよりその子らしい発達、大人であれば「その方らしい生活」を遂げられるなどがあげられるでしょう。

発達障害の診断がなされていると思うので、病型に沿った治療がなされているかを確認しつつ、病型に合った関わりをするのが重要です。

さらに、複合型の罹患している場合もありうるので、それぞれの方の症状について把握する必要があります。

もし診断医されていない、一病名しかついていないが、他にも障害があるかもしれないと疑われる場合、受診時の状況や主治医と連絡を取るなどの工夫をした方が良いでしょう。

 

発達障害児の観察項目

精神面の観察ポイント

・表情や言動
・会話時に不随意運動や身体の硬直がないか
・音や温度に対する敏感度はどうか
・カッとなりやすい
・落ち着きのなさ
・パニックになりやすいなどはないか
・IQや知的レベルはどうか
・表情や身だしなみ

言語的コミュニケーションが苦手である分、非言語的なコミュニケーションにいいたいことが現れることも多いのです。

たとえば「言葉がうまく出なくてイライラするときに不随意運動が起こりやすい」などです。

行動のコントロールが未熟なのはADHDやASDの方に多く見られ、同じ服ばかりを着用する・音に敏感で日常生活に支障があるなどこだわりの強さはADHDによく現れます。

 

身体面の観察ポイント

・食事摂取状況
・体重
・排泄の状況(夜尿や排便の頻度)
・歩行や走行など年齢に応じた運動発達ができているか

以上の点を観察をしましょう。

白米しか食べられないなど強度の偏食の子どももいるため、小児では栄養状態や成長の程度などについても確認します。

成人の場合、長期間にわたる偏食のために高コレステロール血症などのリスクがあります。

 

社会面の観察ポイント

・友人や家族・学校の友人との人間関係
・学校で周囲との関わりに不安を感じていないか
・家庭で家族とのかかわりはどうか

被虐待児となるリスクが高まるため親子関係の観察も重要となるでしょう。

一方、発達障害がある方はコミュニケーションへの自信のなさから周囲との関係が疎遠となり、社会から孤立しがちです。

その孤立が、さらなるコミュニケーション能力の低下を招く恐れがあることを看護師は知っておかねばなりません。

 

発達障害がある方の看護

 

発達障害がある方は他者とのコミュニケーションが難しく、自分の思いを表出することが困難であることが多いのです。

看護者は対象者に対して受容的な態度で接し、思いを表出しやすい様な雰囲気作りから始める必要があります。

信頼関係を築くことも容易ではないため、安心感をもって接してもらえる態度を継続しましょう。

病識については対象者だけでなく家族と共に確認していきます。

治療の中断は病状だけでなく、子どもの場合は成長に、大人の場合社会生活に影響を及ぼします。

もし対象者も家族も、ともに病識の欠如があれば、通院や投薬の必要性について指導する必要があるでしょう。

発達障害の種類によって、文字による情報が入りにくい、掲示物の内容がわからないなどがあります。

たとえばADHDとLDを併せ持つ子どもに交通ルールを教える場合「イラストでお手本を示すと頭に入りやすい」などがあります。

対象者の理解度やコミュニケーション能力に合わせて看護師の関わり方を工夫しましょう。

 

発達障害の看護研究

 

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発達障害の看護研究については件数が少ないのです。

発達障害の診断事態が近年になって増えてきたこと、診断は複合的で症状も複雑であることから看護診断や症例分析の難しさがあげられます。

その中でも、発達障害の看護をするにあたって、参考になりそうな研究論文を紹介します。

 

発達障害者・児における支援の現状

 

広島大学大学院心理研究センター

広島大学大学院心理研究センターの発表した研究です。

発達障害児を持つ家族が抱えている社会的背景や家族間の人間関係、家族援助について記されています。

人間関係についてですが、親たちは非障害児であるきょうだい児に比べ、障害児とかかわる時間は少なくなります。

きょうだい側としては、障害児の世話に時間がかかるため、親をとられたと感じたり、障害児の世話の手伝いをすることで、きょうだいとして受け入れにくくなるのです。

障害の診断は1歳半健診などで発見されることが増えてきています。

早期診断は家族の障害受容や治療に有効ですが、子どもの行動を見て診断を下す自閉症などの障害は早期発見が難しいのです。

需要については段階があり、どの家族もスムーズに受け入れられるわけではありません。

親は障害児を養育する難しさに直面しますが、障害児をどこまで受け入れているのかという心の持ち方は障害児に多くの影響を与えるのです。

この研究では親への必要な支援として適切な情報提供、ペアレントトレーニングについて触れています。

子どもとかかわるときに、ほめ方・してほしくない行動の止め方などは正しい知識とトレーニングで習得できる。関わる看護師も知っておくとよい情報であろうと思われます。

 

青年・成人期の広汎性発達障害を持つ人とその家族への訪問看護の役割検討

 

兵庫県立大学看護学部

兵庫県立大学看護学部の研究論文です。訪問看護ステーションや発達障害者支援機関にアンケートをとる質問形式の研究です。

訪問看護師が広汎性発達障害の方と関わる場合に行っていることや、訪問看護や支援センターでの効果について集計・分析しています。

発達障害というと幼児や学童期の患児は注目されますが、子どもは成長すれば青年期・成人期を迎えます。

成長していった発達障害のある方がどの様な困難を抱え、訪問看護が何に役立っているかを表す内容が記述されております。

広汎性発達障害は、対人関係やコミュニケーションに障害があり、興味関心や活動が現局される障害です。

幼少期に診断され、当然ですが青年期以降も症状は続きます。

しかし、青年期になると将来の選択・就労・親からの自立などの発達課題をこなす必要が出て来るのです。

研究のアンケート結果では訪問看護において、不安や心配ごとへの支援・活動と休息に難する支援・視診症状緩和に難する支援などが多く、支援者に求められる精神的援助の重要性が際立つ結果となりました。

一方、家族間の関係性の調整・家族との付き合い方に関する支援なども目立ち、人間関係への支援は必須という結果も見えてきました。

看護者の役割として、障害の性質を理解し、支援の必要な人が何に困っているのかに照準をあわせて援助する重要性を確認できる研究論文です。

 

まとめ:発達障害について正しい知識をもってケアを

 

看護師が抑えたい発達障害についてお伝えしました。

発達障害は先天性か遺伝的なものであり、治療によって治癒するものではありません。しかし、幼少期に早期診断されて周囲の擁護者・看護者が適切な関わりを持てば、症状が軽快していく場合も多いのです。

親は障害を受け入れにくかったり、親自身に発達障害がある場合は、病識の欠如から虐待につながるリスクがあります。

看護介入によって周囲の大人が発達障害への理解を深められたり、よりよい関わりができるよう援助できると理想的だといえるでしょう。


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