有料老人ホームの看護師は、入居者が安心して生活できるようにサポートする大切な存在です。
この記事では、有料老人ホームの看護師の役割や1日のスケジュール、キャリアアップについてご紹介します。今後考えられる看護師の役割の変化も解説していますので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
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お仕事探しの参考にしていただける内容となっていますので、転職活動にお悩みの方は是非参考にしてみてください。
Contents
有料老人ホーム看護師の基本的な役割
有料老人ホームは、要支援や要介護認定を受けた高齢者が介護サービス受けながら生活する施設です。
提供される介護サービスには、以下のものがあります。
- ●食事の提供
- ●介護(入浴・排泄・食事)の提供
- ●洗濯や掃除などの家事のサポート
- ●健康管理
この中で看護師の主な役割は入居者の健康管理ですが、そのなかでもさまざまな業務があります。
有料老人ホームで働く看護師の一日のスケジュールから詳しくみていきましょう。
有料老人ホームの看護師の1日のスケジュール
有料老人ホームの看護師は、入居者の健康状態のチェックや薬の管理、必要時の医師との連携、緊急時の対応など幅広い役割があります。食事や排泄、清潔ケアのサポートは介護スタッフが主となり、協力して行うところが多いでしょう。
有料老人ホームで働く看護師の1日のスケジュールを表にまとめました。
日常的な健康管理
有料老人ホームの入居者には、高齢により何らかの疾患を抱えている方も多いでしょう。
そのため、入居者の既往歴を把握するとともに、病気の悪化予防に努める必要もあります。日常的な健康管理の業務は、入居者の健康を維持するためには不可欠です。
健康管理の具体的な業務内容は以下の通りです。
- ●バイタルサインや体調の確認
- ●医師の指示に基づく医療的ケア:在宅酸素療法や胃ろうの管理、吸引など
- ●褥瘡の処置
- ●薬の管理と配薬、与薬
- ●通院や入退院のサポート
入居者は高齢により身体の機能が低下している状態であり、それに伴い認知機能も低下していることがあります。認知機能の低下から、体調不良や何か症状があっても本人からの訴えがなく、周囲も気がつかないことがあるでしょう。
看護師は、日常的な健康管理により普段の体調や様子を把握し、入居者の体調の変化に早めに気づき、対応できるように努めます。
入居者の病気の発症予防はもちろんですが、病気の早期発見や既往疾患の重症化を予防することが重要です。入居者の健康を支える大切な役割であり、看護師のやりがいにもつながる業務となるでしょう。
緊急対応の実務
有料老人ホームに在籍する看護師は1名~数名と人数が少ないうえに、入居者の緊急対応が必要な場合は看護師がリーダーとなることが多いでしょう。緊急時には介護スタッフと連携して対応しますが、看護師の迅速な判断が求められることがあります。責任の大きい業務ではありますが、看護師の重要な役割のひとつです。
緊急時のスタッフ間の連携には、日ごろの訓練も欠かせません。たとえば、意識がない入居者を発見した場合に必要な訓練をみてみましょう。
- ●意識がない入居者を発見したスタッフの初めの行動
- ●役割分担
- ●119番通報の方法
- ●AEDの設置場所や使用方法
- ●主治医との連携
- ●救急隊の誘導
緊急を要する場面を想定して職員全員でシミュレーションし、緊急時に迅速に行動できるようにしておくことが重要です。
また、以下のような取り組みも行うとよいでしょう。
- ●緊急時対応のマニュアルを作成する(主治医との連携方法、役割分担など)
- ●119番緊急通報の流れを表にして見やすい場所に貼る
- ●毎月、緊急対応をテーマとした職員研修を行う
職員全体で連携できるようにしておくことはもちろんですが、夜勤帯や看護師が不在のときにも適切な対応ができるようにしておくことも重要です。
緊急時には冷静な判断が求められるため、さまざまな場面で対応できるように研修や訓練を積み重ねることが大切です。
入居者とのコミュニケーション
有料老人ホームの看護師は、入居者の生活の一部ともいえるため、入居者との密なコミュニケーションは欠かせないものです。
コミュニケーションで大切なスキルのひとつに「傾聴」があります。話し手の言葉をただ聞くのではなく、相手に対する共感や受容、肯定的な関心を寄せて耳を傾けることです。
聞き手の評価を加えずにありのままを受け止めることで、話し手にとって「自分の話を聞いてもらえる」という安心感につながるでしょう。信頼関係を築くためにも重要なスキルです。
看護師は相手の話を傾聴することを通して、有料老人ホームを住まいとして生活する入居者の価値観や想いを理解し、本人の希望に沿った生活環境を整えられるよう努めます。
またコミュニケーションを通して、体調や病状に関することや不安などを把握し、看護師の視点からアセスメントしてケアにつなげることも大切でしょう。
そして、入居者を支えることのひとつに「ご家族へのサポート」もあります。
有料老人ホームの入居者の中には、家庭の事情でご家族と離れている方もいるでしょう。
入居者とご家族の絆が途切れることがないように、以下のようなサポートします。
- ●入居者の変化を伝える
- ●ご家族の想いも傾聴し、入居者のケアに反映する
- ●有料老人ホームの生活環境についてご家族が理解できるよう説明する
ご家族との絆は、入居者の精神面への安定にもつながるでしょう。
看護師は、入居者の心の支えとなり、有料老人ホームで穏やかに過ごすことができるようにサポートします。
看護師が有料老人ホームで働くメリットとやりがい
有料老人ホームで働く看護師には、幅広い知識や対応が必要とされますが、有料老人ホームで経験を積むメリットもあります。
メリットのひとつは、入居者とじっくり向き合い、長期的に関わる看護ができることです。生活を支える看護を経験し、実践できることは大きなやりがいとなるでしょう。
また、今後の社会情勢の点からも、有料老人ホームでの看護師経験は大きな強みとなります。
職場の安定性と需要の多さ
近年の高齢化社会を背景に、有料老人ホームは需要が高まっており、有料老人ホームの看護師は、今後ますます必要とされるでしょう。
有料老人ホームの種類
介護付き有料老人ホーム | 住宅型有料老人ホーム | |
概要 | 介護などのサービスが付いた高齢者向けの居住施設 | 生活支援などのサービスが付いた高齢者向けの居住施設 |
介護サービス | 有料老人ホームが直接提供する | 必要な場合は外部の事業所と個別に契約して利用する |
人員配置 | 入居者3人に対して看護・介護職員が1人以上 | 明確な規定なし |
参考・引用:特定施設入居者生活介護|厚生労働省
介護付き有料老人ホームでは施設内で介護サービスの提供があり、月額費用に含まれている点です。
住宅型有料老人ホームの入居者は、介護サービスを利用したい場合は外部のサービスを利用し、そのぶん費用がかかります。
住宅型有料老人ホームにおける生活支援とは、食事の提供や掃除、洗濯、生活相談や見守りなどです。介護サービスが含まれていないため、比較的介護度の低い方の利用が多い傾向にあります。
しかし、有料老人ホームを利用する介護度が高い高齢者は年々増加しているため、介護サービスを利用する入居者も増えることが推測されます。
介護度が高くなると、健康管理や医療的ケアが必要な方も増加するでしょう。
その点からも、有料老人ホームで働く看護師は重要な存在であり、有料老人ホームは看護師の職場環境として安定しているといえます。
有料老人ホームの看護師が気をつけるべきポイント
有料老人ホームで看護師として働くうえで、課題もあります。
入居者の介護度だけでなく、医療的ケアやニーズもさまざまなため、看護師は幅広く専門的な知識や対応が必要とされます。
また、入居者の中には認知機能が低下していたり、終末期であったりと、対応に配慮が必要な方もいるでしょう。
入居者へのケアや対応に関して看護師が気を付けたいポイントをお伝えします。
高齢者の特殊なケアニーズ
有料老人ホームの看護師は、医師の指示のもとで一定の医療行為を行うことが可能です。
有料老人ホームの入居者には、さまざまな健康問題を抱えている方がおり、看護師は医療ニーズがある高齢者の生活を支えるための役割を果たすことが求められています。
たとえば、以下のような医療ケアやニーズがあります。
- ●胃ろうや喀痰吸引、在宅酸素療法など医療機器を使用している方
- ●褥瘡の処置が必要な方
- ●認知症で個別的な配慮が必要な方
- ●終末期で看取り対応の方
医療ケアが必要な場合、医師の指示を確認し、適切な対応を知っておくことが重要です。
看護師として専門的な知識が必要とされますが、今後は知識やスキルをもった看護師がさらに重要な存在となるでしょう。
有料老人ホームの看護師としてのキャリアアップ
有料老人ホームの看護師として働くことを考えたとき、キャリアアップの方法も気になるところです。
有料老人ホームで看護師の経験を積みつながら、自分の興味のある分野で資格を取得したり、昇進を目指したりするなど、キャリアアップの方法をご紹介します。
継続教育と専門スキルの習得
看護師が教育を受ける機会は、さまざまあります。
施設内での継続的な研修の実施や、施設外の研修やセミナーの受講など、自分の興味に応じて選択することができるでしょう。
また、資格を取得し専門的なスキルを身につけるのも良いかもしれません。
有料老人ホームで働く看護師に役立つ資格の例として、以下のものがあります。
資格 | 内容 |
ケアマネジャー
(介護支援専門員) |
・都道府県が認定する公的資格 ・保健医療福祉分野での実務経験が5年以上必要 ・要支援、要介護の方の相談にのり、介護サービスを受けられるようにケアプランの作成や施設との連絡調整を行う |
終末期ケア専門士 | ・日本終末期ケア協会が認定する民間資格 ・2年以上の実務経験が必要 ・終末期ケアの専門的な知識を持ち、エビデンスに基づいたケアの実践を行えることを目指す |
認知症ケア専門士 | ・日本認知症ケア学会が認定する民間資格 ・認知症ケアに関する施設、団体、機関において、試験実施年の3月31日より過去10年間において3年以上の認知症ケアの実務経験が必要 ・認知症ケアの実践的な知識やスキルを身につけ、スタッフや家族からの相談アドバイスを行う |
終末期ケアや認知症ケアは今後ニーズが高まることが推測されます。
専門的な知識をもつことで、職場のスタッフや入居者のご家族にとって心強い存在となれるでしょう。
職場での昇進機会
有料老人ホームで看護師の経験を積んだあと、管理や指導する役割に昇進する機会があるでしょう。明確な経験年数は規定されていませんが、有料老人ホームの施設長に進む道もあります。
管理や指導する立場である施設長を目指すには、有料老人ホームでの豊富な経験はもちろん、知識やスキルを磨くことが重要です。
有料老人ホームの施設長の主な仕事は、以下の通りです。
項目 | 仕事内容 |
利用者の管理 | ・入居者の状態を把握する
・ケアプランに沿ったサービス提供ができているか確認する ・定期的にご家族との面談を行う ・サービスの向上に努める |
職員の管理 | ・職員の採用や教育を行う
・職員の勤務状況や労働時間、有給取得状況を把握する |
運営の管理 | ・施設の運営方針や理念に沿ったサービスが提供できているか確認する
・広報活動や営業活動を行う ・法令を遵守できているか確認する |
収支の管理 | ・入居者との契約、請求業務などの管理を行う
・収入と収支を把握する |
行政の調整 | ・介護保険事業の届出を適切に行う
・事故報告書や消防計画の作成、提出など行政関連の手続きを行う |
有料老人ホームの施設長への昇進を目指す方は、リーダーシップやマネジメントスキル、教育や運営などの研修に積極的に参加しましょう。
有料老人ホームの看護師の平均給与
有料老人ホームの看護師の給与や昇給のポイントについてお伝えします。
一般的な病院で働く看護師の平均月額給与は39~40万円です。一方、有料老人ホームで働く看護師の平均的な給与は常勤で約43万円、非常勤で約41万円ですが、地域によっても差があります。
病院の看護師と比べ高い給与額ですが、有料老人ホームの施設によっては夜勤対応のないところもあり、その場合は夜勤手当がない点に注意が必要です。
今後、医療や福祉の現場では看護師の需要が高まると推測されるため、有料老人ホームの看護師の待遇も下がることは考えにくいでしょう。
昇給や給与アップをするための方法は施設によりさまざまですが、以下の条件が考えられます。
- ●経験年数
- ●業務への積極的な姿勢
- ●介護現場に関わる資格の取得
- ●外部の研修やセミナーへの参加
- ●職場での勉強会の開催や新人教育などリーダーシップの発揮
日々の業務はもちろん、新人や他のスタッフへの教育、リーダーシップを発揮することなど、職場で活躍することで昇給や給与アップの機会に恵まれるでしょう。
看護師体験談~食事サポートで見せてくれた笑顔~
有料老人ホームで働く魅力について
有料老人ホームは「生活の場」であるため、入居者にとって看護師は生活を支えてくれる心強い存在だと思います。日々の健康管理やコミュニケーションを通して入居者とじっくり向き合い、価値観や想いを尊重した関わりができます。
有料老人ホームで働く中で嬉しかったこと
食べることが大好きな入居者のAさんのサポートをした際のことです。
食事のときにむせることが多くなり、嚥下機能が低下していることが考えられました。
食事の形態を検討しますが、Aさんは「いつもと同じように、食べることを楽しみたい」という想いがあります。
そこで、医師や介護スタッフ、栄養士と相談し、食事の形態を嚥下状態に合わせつつ、できるだけ味や食感はそのまま残すように工夫しました。
誤嚥予防のポジショニングを実践しつつ、Aさんの食事をサポートします。
これまでと違う食事の形態に少し不満そうなAさんでしたが、一口食べると「おいしい」と笑顔を見せてくれました。
対応が難しいと思われることであっても、多職種と連携しながら試行錯誤し、入居者の生活の質をサポートできることは日々の仕事の中でとても充足感が得られます。
また、入居者一人ひとりの生きがいや楽しみを一緒に経験したり、大切にしたりできることも、有料老人ホームの看護師の醍醐味ではないでしょうか。
静岡県で有料老人ホームの看護師として働く
有料老人ホームでの看護師は、入居者との関わりを通して質の高いケアやコミュニケーションを身につけられるのが魅力です。
比較的長い時間をかけて入居者様と関わることができます。
医療機関のように忙しいスケジュールに追われるのではなく、日々の健康管理やお話を通じて、一人ひとりの生活を支えることができます。温かい人間関係を築きながらケアできる点は、大きなやりがいとなるでしょう。
医療の現場では得られない「つながり」や「感謝」を感じられると思います。
あなたの看護師としてのキャリアが充実するよう、自分の希望に合った職場選びをしてくださいね。
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監修者プロフィール
酒井 隆之 株式会社アクタガワHRM コンサルタント
